FC2ブログ

ノルウェーの絵本作家:グロー・ダーレさん、初来日講演

広島国際アニメーションフェスティバル 2010 グランプリ受賞作品『アングリー・マン』の原作絵本である『パパと怒り鬼』

の作者グロー・ダーレ氏の講演会@ノルウェー王国大使館アークティックホールに行ってきました。詩人で絵本作家(しかもDVなどの難しい社会問題を題材にしている)ということで、物静かで小柄な方なのかな?と勝手に想像していたのですが、良い意味で裏切られました。とても明るくて声も体も大きな楽しい女性でした。

以下、印象に残った言葉:


【ノルウェーにおける絵本の位置付け】
◎ここ30年、ノルウェーは世界に冠たる絵本の王国になっている。
◎ノルウェーにおける絵本は、児童文学の1ジャンルではなく、様々な年齢層にアピールする媒体(メディア)である。ティーン向け、大人向けの絵本もある。
《佐藤註》日本における漫画のような位置付けかな?

【ノルウェーにおける絵本の歴史】
◎1970年代に現代的な絵本が登場した。大人向けだが、子どもも読む、という作品群。
◎詩人、作家など様々な分野から絵本に参入してきた。劇作家としても有名なヨン・フォッセ氏は「これからの絵本はすべての年齢に対応すべき」というマニフェストを新聞に発表した。

【言葉と、見える部分、見えない部分】
◎ダーレ氏の出発点は「詩」。テキストと詩を重視している。複層的テキストを書くことに慣れている。複層的な構造が様々な空間を生み出す。メタファーやアレゴリーを使うのも大好き。いろんな意味にとれる言葉を使うのも好き。劇作の仕事もしてきた。詩と演劇の融合。
◎自分の絵本は舞台芸術だと考えている。ページをめくる度にシーンが変わっていく。ページをめくる度に「オー」「アー」「アハー」と体験できる作り(←《佐藤註》大げさなジェスチャーで説明したので会場が笑いで満たされる)。コスチュームやライティングなども含め、出演者たちが演技を繰り広げている。
◎絵は、夫のスヴァイン・ニーフース氏が担当している。
◎絵本は、1人で読むだけではなく、いろんな人(両親・祖父母・先生)と読むことが多いと思う。
◎目に見えない部分にもテキストがある。子どもたちは表面的な出来事に心を奪われがちだが、大人はその下に潜むものを見ようとする。こうした構造こそが、ノルウェーの様々な作家たちが絵本に参入した理由。
◎絵本は様々な実験が可能。

【本の買い取り制度】
◎ノルウェーには「本の買い取り制度」がある。芸術的に優れていると国が認めた作品を、国が買い取り、全国の小学校の図書館に配布する。
◎詩人・絵本作家・短編小説家・漫画家などが、経済的に苦しくても、やっていける仕組み。
◎作品のクオリティを維持するための保険にもなっている。
◎買い取り冊数は、1作品あたり、1550冊(子ども向け)、1000冊(大人向け)。
◎「本の買い取り制度」がノルウェーを「豊かな絵本・詩・芸術の国」にした、と考える人は多い。

【絵本『パパと怒り鬼』について】
◎『パパと怒り鬼』を作る前はDVに関する知識が無かったので、リサーチした。この絵本を企画したオリビー・アッシェム氏(編集者?)がDV被害者の子どもたちの声(レポート)をたくさん見せてくれた。そこには「私は怖かった」などといった抽象的な表現ではなく、「パパが家に帰ると、震え出した」とか「パパとママが喧嘩すると、お腹が痛くなった」など非常に具体的な表現で書かれていた。
◎「両親の暴力は、君(子ども)のせいではない」と「希望を捨てないで」の2つが大事なメッセージ。

【絵本『Snill(よい子)』について】
◎よい子すぎて、自分の声をなくしてしまい、次第に小さくなり、ついには見えなくなってしまう少女の話。
◎ノルウェーでは大成功した。大人女性が大人女性にプレゼントしている。
◎日本における出版社を探しているところ。
◎最後に、ダーレ氏ご自身による『Snill』の朗読。
 《佐藤註》演劇のような凄い迫力でした。抑揚と緩急があり音楽的で面白い(「テキストに音楽的要素を含めるのが好き」とのこと)。

【質疑応答より】
Q.ノルウェーは平等社会なのに、『パパと怒り鬼』では「稼いでくるのは夫」という設定になっているのはなぜ?
A.あのママの姿は、たしかにあまりノルウェーっぽくない。ただ、夫に立ち向かえない(経済的にも依存している)という姿を演じてもらった。

Q.最近のDVの動向は?
A.残念ながらDVは今も存在する。が、『パパと怒り鬼』が出版されてから、社会的に注目が集まったのは良かったと思う。ノルウェーの人口は500万人。何らかの暴力に晒されている子どもは1万1千人と推定されている。これはかなり高い割合だ。DVが公になるに従い、セラピーに参加する人が増えてきた。「人は変われる」と私は信じている。

※上記の発言内容は、一部、主旨を変えない範囲で“意訳”してあります。誤りがあれば、ご指摘下さい。

コメントの投稿


秘密にする
HOME