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藝大・国際シンポジウム2015「ドラえもんは、『スーパーグローバル』になれるのか?」

東京藝術大学 産学官アニメーション国際シンポジウム2015
ドラえもんは、「スーパーグローバル」になれるのか?
〜22世紀を見すえたアニメーション人材育成〜

2015年2月15日(日)13:00〜18:30
東京藝術大学上野キャンパス音楽学部第6ホール

以下、印象に残った言葉:


第1部:人材育成から見た「スーパーグローバル」

★布山タルト(日本・東京藝術大学)
・表現の多様性を広げることが一番大事、と考えている。でも、奇をてらっただけではダメ。
・International Students' Co-Work of Animation
 日中韓3大学の共同ワークショップ。6人1グループ。1週間で30秒の作品を制作する。
 事前にネット上で構成を検討する《佐藤註:プリプロダクションは遠隔で、ということ》。
 We are the same, but different, but same.(参加学生[中国]による象徴的な言葉)

★イ・ジョンミン(韓国・韓国芸術総合学校 = K ARTS)
・「未来の古典芸術」をどうするか、が課題。
・その作家のマンガを見れば、絵を描けるか、物語を作れるか、構成できるか、が分かる。

★ガオ・ウェイファ(中国・中国伝媒大学)
・国際協力。サマースクールで仏ゴブランとワークショップ(5本の1分アニメーションができた)。
 単に作品を作るだけではない。異文化交流・体験も大事。
・国のアニメーションとデジタルアートの高等教育ガイドラインを作った(カリキュラムづくりの参考用)。

★セシル・ブロンデル(フランス・ゴブラン高等専門学校)
・フランスのアニメーション市場:年間予算2億ドル。150のスタジオ。業界は拡大している。
・「フレンチ タッチ」。フランスのやり方がある。
 Low priceでもクオリティは高い。1500万ユーロで長編ができるのはフランスの誇り。
 フランスTVアニメシリーズのうち 16% は、大人向け!

★リピット水田アキラ(米国・南カリフォルニア大学 = USC)
・制作スタジオが校内に7つ。大きなグリーンスクリーンスタジオも。
・IMAX社「コンテンツが足りない!」ので、IMAXシアターを3大学に寄付した。
 しかも、観客席を外せるため、その場で見ながら制作できる。《佐藤註:かなり贅沢な環境だ》
・映画の作者というと、これまで監督や脚本家というイメージが多かったが、最近の学生は変わってきた。
 ビジュアルエフェクトやポスプロ、アニメーションに憧れている。
・「世界作り」(world building)の重要性。映画作りは脚本家から始める(伝統的な作り方)のではなく、最初から「世界観」を考える(監督・脚本・プロダクションデザイナーなど主要スタッフで)方向に変わってきている。空間を作っていく、ことが重要。

★ラリー・バフィア(カナダ・Centre for Digital Media)
・Rapid Iteration of Prototypes。まず紙で試す。修正しやすい。
・これまでの作り方は Linear Pipeline だった。
 layout → R&D → modeling → texturing → rigging → animation
・今後は Non-Linear Pipeline に。
 Concept → Pre-vis(layout、animation、fx 等を並行して進める)→ Production(同左)→ Final Images

☆☆☆ パネルディスカッション ☆☆☆
【韓国の状況】
・アニメーションは5つのキラーコンテンツの中の1つ。政府が重視しているのは産業化、文化・教育。
・2000年以前はOEM王国だった韓国アニメ産業。2000年に変革が起こった。よりクリエイティブな方向へ。
【中国の状況】
・2004年以降、国としてもアニメーションに注力。制作時間は日本を超えて世界一(20万時間)に。
・50くらいの「アニメーション・ベース」がある。小さな制作プロダクションなどを誘致して、一大拠点とする。
【フランスの状況(EU全体も含めて)】
・デンマーク。アニメーションの制作が盛んになっている。スタジオも増えている。
・東欧も強力になってきている。が、ヨーロッパの中ではフランスが依然として1番だ。
【カナダの状況】
・NFBもある。ケベック州の場合、自治体がコプロダクション(共同製作)を推奨している。
・すでに「助成金のため」の段階は終わっている。今やバンクーバーには有能な人材がいる。
・SIGGRAPH などのカンファレンスを開催しているのも良い効果をもたらしているのでは?
・就労ビザの発行についても公が積極的。
【米国の状況】
・USCは私立大学。州から予算をもらっていないので学費が高い。
・州立大学の学費が安いとはいえ、それは州の人向けの学費。外部からだと3倍くらい高い学費になる。だから州の学生ばかりになってしまう。
・国際化という意味では、USC(私立大学)の方が進んでいる。
・この水ボトル。ラベルを外しているのはなぜ?(宣伝になってしまうから)。USCなら逆にラベルを大きくして宣伝費をとるだろう。
・客員教授や非常勤講師は呼びやすい。が、専任(フルタイム)は難しい。作家(監督・脚本家)はともかく、アニメーターは「なんで教授にならなければいけないんだ」と。

●アニメーションと大学をめぐる状況について
・学校がリーダーシップを握ること。数年後、産業構造は変わっていくだろうが、将来に備える。学生は、独立精神を持っていれば、アニメーションを作り続けることができるだろう。大学が企業を持つ(学内企業)ことも特徴的。大学と外部企業とのコラボも進めたい。(イ@韓国)
・新しいもの(制作体制も、カリキュラムも)を求めている。現在1クラス21名。(ガオ@中国)
・グローバル化は当たり前。卓越した才能を育てるのがスーパーグローバル。とはいえ、トップ人材を作るというよりは、連携してチームとして活躍できるようにする方向性の方が大事なのではないか?(そのためには大学間の連携も必要!)(布山@日本)


第2部:コンテンツプロデュースから見た「スーパーグローバル」

★岡本美津子(東京藝術大学)司会
・ローカライズについて。「日本が大好きなんです。変えないでください」という海外の学生になんて答えればいいのか迷ったことがある。

★海部正樹(Wowmax Media)
・ドラえもんをディズニーの番組評価テストに通した実績がある(通すためのコンサルをした)。
・Q:「海外向けに、日本のアニメを変える必要があるのか?」については、A:「ものによる」と答える。
・現状の国産アニメの比率:子供向けと、(初めから)海外向けが、各7% それ以外(86%)は一般向け。
・一般向けは、ローカライズの際に変えちゃダメ(ターゲット顧客は海外のアニメファン)。日本のファンが感じるような忠実なローカライズにすること。原語でも良いくらい。だが、マス・プロパティの場合(子供向け)、わかりやすい翻訳・笑える翻訳にする必要がある。
・ドラえもんのローカライズの実際。4つの要素がある:トーン(雰囲気)、ペーシング(テンポ:ひみつ道具はなるべく早く出たほうが良い。日本向けのオリジナル作品は、ひみつ道具が出るまで2分半〜3分だったが、もっと短くする必要性を感じ1分台にした)、ユーモア(日本のアニメは笑いが少ない。30秒に1回笑いを)、メインキャラクター(日本のアニメは難しいと言われる。主人公は、アメリカの子どもたちが憧れる存在であること。のび太にはなりたくないだろう。そこで、ドラえもんを主役にした。のび太はサブキャラに。大きな変更となるが、このように改変しやすい話を探した)。
・コンセプトから変えることになるので、日本では「それではドラえもんではなくなってしまう」と皆から言われる。が、今回の目的は、ディズニーの審査で高得点をとることだった。
・ちなみに、中国・韓国ではドラえもんは大人気である。米国が特殊なのだ。

★南雅彦(ボンズ)
・「スペース☆ダンディ」(「カウボーイビバップ」のスタッフが再結集)の北米TV販売のポイント:
・日本と同時にTV放送が可能な制作スケジュール体制の構築が一番の命題。
・放送の3ヶ月前に作品を完成させること。→日本では3日前に完成なんてこともある。異例。
・通常は現地ライセンシーに独占許諾する。今回は、CARTOON NETWORKへのTV放映権の直接営業契約。TV放映権以外のライセンシーへの許諾も同時に行った。サイマル展開先、CNサイト、Hulu、iTunes…など。
・1話完結=北米向け。「コレクターズプロパティ」なので、全体的に北米アニメファン向けの作品づくり。
・ローカライズ費用。1話で約100万円必要だが、今回は公的な助成金を入れたのでスムーズに進んだ。
・放送前に「英語版」があるので、アジア地域での売り込みはスムーズに進んだ。全世界同時展開が楽に。

★竹内孝次(アニメーションプロデューサー)
・『ニモ』のプロモーションビデオ(1984年)。街の中、ベッドが空を飛ぶ。
・国ごとに、メンタリティが違うのだということ。マスに情報を送り出す際には注意。
 例えば、色についての感覚。赤(暖かい)と青(冷たい)は、ほぼ万国共通だが、
 米国ではオナラの色は緑色(日本は黄色)。
 少女に「石鹸の匂いがするね」と言った場合、アメリカではバカにしていることが多い。
 「君の彼女素敵だね」と言われた時、フランス人は「気があるのか?」と考える。
・日本は「皆、同じはず」から始める。他国では「皆、違うはず」から始める。
・センサーシップ(検閲?)。作り手の側が知らなければならない。
・文章は短く。主語・述語を明確に。

★西村隆(ユニジャパン)
・ユニジャパンはローカライズを支援している。J-LOP(これもローカライズ支援)の立ち上げにも関わった。
・「クールジャパン戦略」。日本のコンテンツで、海外にファンを増やす。日本の商品(車とか家電とか)の売上増も狙う。旅行者も増えるだろう。→ 国富の増大へ。
・補正におけるコンテンツ海外展開支援施策・予算155億円(うち経産省123億円、総務省32億円)。
 ローカライズ支援(最大1/2)と、プロモ支援(最大1/2)。
・J-LOPは今年度までで終わるが、来年度から、別の支援が始まる。60億円。
 10年やらないと効果が出ないんじゃないの?という人が多かったが、国の予算は1年単位なので。
 J-LOPの実績は全部で3000件(TVが多い。アニメも多い)。金額としては、ゲームが一番多い。

●海外展開を念頭に置いたとき、企画面で気をつけるべきこと
・日本のアニメーションは、もともと日本の観客向けに作られている。それでも海外で受けている。パッケージビジネスが苦しくなってきている。配信へ? どうやって海外の人々に我々の作品を見てもらうか。それがビジネス上の課題。(南)
・中途半端に媚びた作品はダメ。基本的に押さえるべきところはある(米国では児童ポルノやテロ助長などはダメ)が、誰が見ても面白いものにすると、ハリウッド的に平たくなってしまう。(海部)
・日本の製作委員会は、個々の会社がビジネスをするために組んでいる。しかし、個々のことを考えると強力なプロデューサーがいなくなる。ジャッジできる人がいないと小さいビジネスになってしまう。(南)

●グローバル化のための人材育成
・「ポケモン」は米国の会社に利益を持って行かれた。「1話完結」ではない「成長物語」はパッケージとして売りにくい。文化的な「混血」にならないと、本当のソリューションは生まれてこないのでは?(竹内)
・経産省・総務省(放送)・文化庁の連携が必要。単年度ではなく、複数年度の助成にしたいが、難しい。そもそも制作支援や人材育成は1年で結果が出るようなものではないのだが…。(西村)
・制作者の育成について、学校の立場から発言。学生時代から国際共同制作の経験をさせる。各国の大学も力を入れている。クリエイターは育てられても、プロデューサーはなかなか育てられない。(岡本)
・自分は制作進行の経験値だけでやっているが、それは良くない。習ってやってきたわけではない。だが、海外ビジネスをやっていないプロダクションが多いのが現状(1回すら海外に行けない)。(南)
・製作委員会は、お金を出した人が著作権も持って行ってしまう。日本的だが、これがまずいのでは? 権利を取れないとビジネスまで踏み込めない。出資者ではなく、制作者が権利を持てないか?(竹内)

●海外への売り込みについて
・日本のビジネスとアメリカのビジネスは異なる。ノウハウは通用しない。(竹内)
・ピッチの勉強をしたほうが良い。ピッチ(特定の人向け)と、プレゼンテーション(全体向け)は違う。ピッチは、特定の誰かに売り込んで説得することがゴール(自分の企画を海外のプロデューサーに見せて、出資させる)。限られた時間の中で、いかに伝えるか? そのテクニックは学校で教えられるのでは?(海部)
 
●「学」(大学などの研究教育機関)に求めること
・海外の人とコミュニケーションをとるためには、まず日本語をきちんと喋れること。日本語では曖昧になりがちな、主語と述語をちゃんと意識する。日本語と英語は違う。「僕、竹内」では通訳の人が困ってしまう。(竹内)
・アニメーションは映像の1ジャンル。ハリウッド映画はよく研究されている。手足が飛ぶとか、昔は表現できなかったが、最近は見せ方が工夫されているので、伝えられるようになった。(南)
・伝える能力。(海部)
・まず、名刺代わりのDVD(ポートフォリオ)を渡せ、と日頃から教育している。(岡本)

●Q&A
Q:クリエイターは育てているが、センサーシップを意識し過ぎるとクリエイティビティが削がれてしまわないか? それをやるのがプロデューサーなのかもしれない。しかし、学校では教えられていない。
A:まず、クリエイターはどんどん育成して欲しい。センサーシップはそれほど意識しなくても良いのでは? クリエイティブはそれらとは別のところにあるように思う。(南)

Q:声優の声質の魅力をどう伝えるか?
A:日本語版の声優のトーンに近づけるのは基本だが、監督の意識として「この人はイギリス訛りにしたい」ということもある。(海部)

●まとめ
今回のシンポジウムで、少し気が楽になった。日本の中だけで人材育成する必要はないのではないか、と気付いた。世界で人材が行き来する、そんな未来像。(岡本)


《佐藤の感想》
 あっという間の5時間半でした。とても有意義なシンポジウムだったと思います。
 まず、ディレクター(クリエイター)の卵に、学生時代から国際共同制作の経験を積ませるのは有効なので、今後も推進して欲しいと思いました。
 国際的に活躍できるプロデューサーを育てるには、海外のプロデューサーやクリエイターやクライアントや出資者らとできるだけ早い時期から “直接” 交渉する機会(つまり、場数)を増やすことが必要ではないでしょうか。昨年11月のカナダ出張で私はこうした機会に恵まれたのですが、本当に勉強になりました。予想以上に日本の常識は通用しません。そのことを肌で感じるには、書籍やネットや伝聞といった間接的な手段では不十分で、これらを鵜呑みにせず、本人が直接得た情報(だけ)に基づき行動できるタフネスが必須だと感じました。とにかく「1対1で交渉する経験をどれだけ積んだか」で決まると思います(できれば通訳も挟まない方がベター)。
 そのために学校ができることとしては、英語と経済学・経営学と国際的に通用する教養。あとは、学生時代から何らかの作品の製作(制作ではなく)に関わって、クリエイターの立場ではなく、プロデューサーの立場でお金の話ができるようになっていること、かな。
 はじめのうちは失敗もたくさんするでしょうが、体当たりで行動しているうちに、モリモリ実力がついてくる ── プロデューサー道の修業とはそういうものではないかと思います。


※上記の発言内容は、一部、主旨を変えない範囲で“意訳”してあります。誤りがあれば、ご指摘下さい。

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