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広島国際アニメフェス用に、世界の学生作品視聴システムを開発しました

第17回 広島国際アニメーションフェスティバル 2018 に、今回もスタッフ(映画祭プロジェクトチームの一員)として参加しました。

私の担当は、若い才能を発掘する場である「エデュケーショナル・フィルム・マーケット」(EFM)と、映画祭公式 Twitter。掛け持ちなので、ツイッターについては、本当はもっとゆるいネタ(こういうの)を多くツイートしたかったのですが、今回も最低限必要な案内のみになってしまったのが反省点です。

さて、EFMの今回の目玉は、新しい「学生作品視聴コーナー」です(ツイート:公式佐藤)。
映画祭の日刊紙「ラッピーニュース」(第2号)の6ページ目に、開発者インタビューが掲載されたので、まずはこちらをご覧頂くのが手っ取り早いのですが、紙幅の都合上、語り足りない部分もあるので、以下に補足いたします。

本システムの要求仕様は、以下の通り:
  • 世界中から広島に応募された学生作品(動画)を誰でも簡単に視聴(閲覧)できるシステム。
  • 「マウスのホイールで作品リストをスクロールして、気になる作品をクリックすれば再生」を繰り返し、視聴していくイメージ。
  • 映画祭期間中という条件で公開の許諾が得られた学生作品の総数は1077本(うち85%が外国の作品)。
  • 視聴用PCは、Mac と Win 各2台の計4台。他にスタッフが使用する管理用PC(Win)が1台。
  • 各作品は、2種類のメディア(ストリーミング、ムービーファイル)のいずれかで提供されている。が、ユーザー(お客様)はこれらの違いを意識することなく、シームレスに(= 同じ操作で)アクセス(= つまり「上映」)できること。
  • 作品のスチル画像、作品タイトル、上映時間、監督名、学校名、制作国、制作年の記載を見て、ユーザーが自由に選択できるようにする。検索機能も欲しい。
  • 作品のスチル画像の縦横比は作品によって異なる。中には、作品のポスターを使っているもの(つまり、縦長!)もある。
  • 映画祭の公用語は日本語と英語なので両方に対応すること。オリジナルタイトルがそれ以外の言語の場合は、原語で表記すること(例えば、仏語や独語の場合は、それらのオリジナルタイトルと英語の併記が原則)。
  • 作品は、映画祭で使用している「通し番号」で管理する。ユーザーがどの作品を視聴したかを映画祭の事務局側でも共有し、作者へフィードバックできるようにする。
  • 特に外国のストリーミング作品にはパスワードが必要なものが多いので、何らかの対策が必要。
  • 事実上「データベース」として与えられているのは、各種の情報が記載された作品リストのファイル(.csv)のみ。
これらを実現するには、システム全体をどのように設計すれば合理的でしょうか? しかも納期は1週間。開発人員は私1人(笑)。
※納期が1週間しかない理由は、「間に合わない!」ということで前任者が何もせずに匙を投げた後、私が引き受けたからです(広島国際アニメーションフェスティバルは、日本を代表する「世界に冠たる国際映画祭」ですから、恥ずかしいところは見せられないし、見せたくない)。

結局、以下の基本方針でデザインしました。
  • フロントエンドはウェブブラウザ。同アプリの検索機能で、作品タイトルや制作国といった検索にも対応できる。
  • ポータルページは、日本作品リストと外国作品リストの2枚(タブで切り替え)。これらに上映専用のタブが自動で追加される。
  • データベース(.csv)からポータルページ(.html)の生成は、Perl Script で自動化。
  • CSS(Webページの見た目)は決め打ちでOK。装飾は実用本位で、作品番号・作品タイトルの背景に蛍光マーカーのように色を付ける程度で良いだろう。
  • 作品のスチル画像は、横幅(のピクセル数)を揃えてリサイズしておく。これは Photoshop で自動処理できる。
  • 閲覧履歴の共有には、クラウドを利用。視聴用PC毎に独立したIDを割り当てておけば、個別に集計できる。
  • URLから作品の通し番号を逆引きする専用サイトを構築。この CGI も Perl Script で実装。
  • ストリーミングのパスワードが必要な場合は、スタッフが手で入力すれば良い。但し、該当する作品については、作品リスト中に日本語と英語でその旨を記載しておく(赤字で目立つように)。
  • 安定したストリーミング再生のために、インターネットとの接続は無線LANではなく有線LANで行う。
実装上で面倒だったのは、csv ファイルの文字コードがユニコードではなく Shift-JIS だったので、フランス語のアクサンやドイツ語のウムラウト等の付いた文字が元から欠落していて、そこを手入力しなければならなかった点です(韓国語、中国語も同様)。学校名の場合は、その学校の公式サイトまで見に行って確認したので、1077 作品の全てではないとはいえ、集中して作業しても5時間は掛かりました。orz...
「仮に Excel で開けなくても、Perl では開けるんだから、UTF-8 の csv にしておいて欲しかったな」というのが正直な感想。

あと、作品の作者から提供されているストリーミングサイトのURLと、閲覧履歴のURLが必ずしも一致しないことにも閉口しました。ストリーミングサイトによっては、自動的に別のURLに飛んで、そこで視聴させることがあるのですね。作品のシリアル番号(に相当する文字列)を頼りに、CGI 側で関連付け(連想)することにより対処しました。

結果的に、起きている時間は全てこの開発に充てることで、設計から実装・テスト・スタッフ向けマニュアル作成まで、1週間・1人で完成しました(無事、映画祭にも間に合いました)。でも、1週間でやる仕事ではないと思います。2〜3週間が適正でしょう。

広島2018EFM 学生作品視聴コーナー  

「ラッピーニュース」に掲載されたこともあり、世界の学生作品視聴コーナーは大盛況でした。大ホール・中ホール・小ホールで有料の上映をしていても、本コーナーから離れずに1人で数十の作品をひたすら見続ける熱心な方も複数名いらして、私も「作って良かったな!」と思いました。あの1週間のどこかで諦めていたら、このコーナーは存在しなかったわけですから、冷や汗ものですね。

学生作品のレベルが非常に高くなったのは、ここ十年くらいでしょうか。日本国内よりも、外国の学生作品のレベルの高さに本当に驚かされます(実際、今回のコンペでも外国の学生作品が多数入選し、受賞していました)。日本の学生にも、もっと外国の学生作品を観て欲しい。「表現の面白さ」で競うのではなく、「伝えたい内容」(つまり、企画)の時点ですでに勝負は始まっています。まさに、コレ。無料で勉強できる最高の教材(お手本)が揃っているのですから、学生さんにも本システムをぜひ活用して欲しいと思いました。

ネット時代になってからリアルの映画祭の存在意義が問われることもありますが、学生作品であっても最新の作品にはパスワードが掛けられている現状は、(一見、逆説的ではありますが)リアルの映画祭という「場」の持つ力を再認識するきっかけとなりました。「リアルの映画祭に足を運ばないと、世界最高レベルの最新のネット作品を見れないよ!」というのは興味深い現象です。


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